日本の合唱の不思議
合唱団の中で歌っているころから不思議に思っていることがある。特に男声合唱に関してだが、歌詞の内容に応じた美しいメロディや激しいリズムの合唱曲を歌っているのに、どうして無表情に、直立不動の姿勢で歌うことが出来るのだろう、と言うことである。楽しい曲なら、笑顔で身体をゆすりながら歌うこともあるだろうが、実は、身体をゆすると指揮者に注意されるのが日本の合唱演奏のスタイルなのだ。これでは客席の聴衆に楽しさが伝わらないと思うのだがどうだろう。9月からコンクールのシーズンなのだが
毎年9月に入ると、合唱やブラスバンド(ブラバン)のコンクールが始まり、新聞や放送でその結果が伝えられる。新聞はともかく、その様子をテレビで観ると、魅力の差がはっきりする。ブラバンのほうは、まず、聴き知った曲が多く、音が大きい。知らない曲でも快調なリズムなら楽しめるし、歌詞が無いから、音を楽しんでいれば良いので、気楽に楽しめる。さらに、メンバーは、派手な衣装の上に、自分の楽器に出番が来ると大きな動きでアピールする。このように、ブラバンは、音楽も演奏スタイルも、視覚的、聴覚的に大いに楽しめる。
一方、合唱演奏はどうか?冒頭で触れたように、楽しい曲でも悲しい曲でも、無表情で、直立不動の姿勢で歌うことが多い。さらに、せっかく意味のある歌詞を歌っているのに、演奏ではその歌詞が聴き取り難いのだ。だから、演奏を聴きながら薄暗い会場で、多くの聴衆がプログラムに小さな文字で印刷された歌詞を一生懸命見ている姿が見られるのだろう。
そう、会場の様子を見ているだけでも、合唱よりブラバンの方がよほど楽しい雰囲気なのだ。
日本の合唱界の将来
このように見て来ると、日本の合唱、特に男声合唱が衰退の道をたどっているのは当然、と思わざるを得ない。女声合唱も昔は頭を振るくらいで、男声合唱と同じような、地味な衣装、不動の姿勢で歌っていたが、おかあさんコーラスが盛んになるにつれて、衣装も動きも派手になって、視覚的に楽しくなった。
混声合唱は、舞台衣装や歌う姿勢には男声合唱とそれほど大きな違いは無いが、男女両方が居る雰囲気は、若い人を引き付けるのだろう。例えば、男声と混声の合唱団がある大学では、混声の団員数の方が男声の数倍なのだ。これは、歴史のある一般合唱団でも同じで、混声より男声の方が、団員数の減少でも高齢化でもはなはだしい。
男声合唱の衰退は「身から出たサビ」と言わざるを得ないと思うのだが、どうだろうか。そして、上記の事柄を見つめる中で、将来の発展の道を考えるのが良いと私は思うのだが。
(終)
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